「おー 土地神か雨を降らせと言う事か
ダメダメだ雨の量は玉帝陛下がお決めに
なる事じゃから 美味い酒が有る?
何処に降らすこんな小さな所にだったら
わしの裾を絞ってみるか」
裾を絞ると滝のような土砂降りの
雨に変わった
「わー気持ちいい オニー」
山も溶岩も冷えて辺りは湯気で真っ白と
なったのを雨師は瓢箪にドンドン
と吸い込ませている
「湯気はこれで役に立つのじゃ」
「ほー どこで役に立つ?」
「天女様は蒸し風呂がお好きじゃから
差し上げると喜ばれるのじゃ
湯殿での湯気の出し加減はわしが行うから
ホホホ 何と言っても湯上りの姿は
目の保養じゃ」
「それなら美味い酒は要らんな」
「それとこれは別の話じゃよ」
この様な激しい訓練を連日続けると闘気を
自由に大きくも小さくもできるように
なってきたが、訓練場からの帰り道は
まだ気が収まっていないので、
たまたま居合わせた下級妖魔などは
闘気を浴びてたちまち消滅してしまう事を
土地神に報告すると訓練場の行き帰りは
空を飛びながら弱い闘気を下に向けて
遠回りして下級妖魔や幽鬼を消滅させる
ように頼まれた。
闘気は陽の気の類なので、邪気を
持たない者には良い影響になって
山の緑は濃くなり、花はたくさん
咲くようになり山の幸も豊かになり
獣も妖魔や幽鬼に驚かされることが
なくなり元気になって行った。
邪気を持ち山を根城にしていた山賊や、
追剥のような人間は、落ち着かなくなり
他の所に去って行ったので、
たきぎ拾いやキノコ採りの人も安心して
山に入りケモノも人も譲り合い互いの
領域に入り込むことがなくなり穏やかな
暮らしに変わっていった。
山の神と兼任の土地神は自分の土地が
豊かで穏やかになってきたのを感謝して
蜂蜜やキノコ、薬草の類を定道に届けると
小秋を始め持女たちは元々自然の物を
食していたので人界の食事は人間でいえば
少しづつ溜まった垢の様な物が溜まって
いたがこれらを食べると体と気の力が
軽くなっていった。
南延城の周りの気の流れが清浄になって
くるとほかの地域の山の神や土地神から
「我々の鬼達では闘気を操って邪気や
幽鬼を払う力が有りません。
どうぞよろしくお願いいたします。」
「んーーん 私の部下でありながら部下では
ないのだよ 相談をして返事をするから
待ってほしい」
福徳正神に相談すると
「邪気や幽鬼を払うのは善い行いだが、
実質の主人が名付け親の定道殿だから
彼の意向が優先されるが、
我々神格が人間にお伺いや意向を尋ねるのは
如何な物かな
小秋様からそのように伝えて戴ければ
互いに無理がないのではないかな」
小秋から定道に意向を聞いてもらうと
「鬼の訓練にもなるので良いのでは
ないか」
と軽く承諾した
広大な国土をすべて飛び回る事は出来ない
ので南延城を中心に半径二百里くらいの
範囲内で邪気や幽鬼に山を荒らされて
困っているという土地神を援護すると
いう事で相談が纏った
一度浄化された土地には邪心を持った者は
居心地悪くなり他の場所に移動するし、
邪気を持ったものが生まれなくなる
南延城より北西に三百里程離れた
兎許県のある辺りは五百年程前に
妖魔どもが暴れまわりいくつもの村や街が
襲われ、多くの人々の命が失われたので
玉帝これを怒り、天兵軍が下されたが、
轟天雷と言う妖魔の大将の妖力は強大で
消滅させる事が出来ないので魂を
五つに砕き、封印したが、
時代が下がって開墾やら新規の道を
通すことになった時、その魂を封印した
場所を壊してしまったために轟天雷の
一部が復活し始めたので、
下級、低級妖魔が次第に数を増やし
土地神や山の神の悩めるところとなって
きたので南延城の土地神は先ずここを
浄化しないと後日の憂いと小秋に進言した
「相手が強大であればあるほど鬼達は
強い力で対抗しますから兎許県の人々の
為にも行動を起こした方が良いと
思いますが、
これも旦那様のご意向に従いましょう」
「困っている方がいるなら使鬼の力を
使って平安になるなら行かせましょう」
「碧鬼と灼鬼よ警護の者を残し兎許県の
山中に赴き、闘気を放ち気の流れを清浄に
してきなさい」
「承りました オニー」
屋敷には小鬼を二匹残し、十五人の鬼達は
横一列に空を飛びながら弱めの闘気を放ち
ながら兎許県をグルリと回ると
低級、下級妖魔はパッと光るとたちどころに
消滅していった。
これを封印さてた所から感じていた轟天雷は
「なかなか強い奴が来たな あの闘気の
出し方は奴らの力の十分の一も出して
いないな 試しに中級妖魔と
戦わしてみるかな」
妖術を使って中級妖魔を作り、鬼達の闘気を
跳ね返させてみると
「なんだーこいつが妖魔か
ぶん殴ってやる オニー」
灼鬼が単騎で妖魔を金棒で散々に打ち据えて
消滅させた
「ふーん こいつ等かなり強いな
もう二匹と妖魔の軍隊を作り出すと
どうなるかな」
二匹の中級妖魔は先ほどよりもっと強力に
して妖魔の軍勢百匹ほど作って送り出すと
灼鬼は強い闘気を発して一瞬でこれまた
消滅させてしまったので轟天雷は
「あれだけの軍勢を闘気だけで消滅させる
とは、これはまずい奴らが来た
ひとまず気を収めてやり過ごそう」
「これでキタナイ奴は全滅か オニー
今、とても強い気が有ったような気が
するが 碧鬼よー感じたか オニー」
「灼鬼 確かにでかい気が有ったような
気がした オニー 皆でもう一度闘気で
照らしてみる オニー」
「大丈夫みたいだ オニー」
轟天雷の気を感じなくなった鬼達は
兎許県周辺を飛び回り気の流れを整えて
帰ってきた。
「あの鬼達は強い!普通ではないくらいに
強い
白面が溜め込んだ魂を全部使っても
仙女たちに勝てなかったと言う噂は
本当だな
こちらが完全でない今は沈黙して身体の
復活を待とう
透視をして見れば李とかいう男はあと
五十年もすれば死んでしまうだろう
使鬼できなくなれば鬼達のはどこかに
行くかも知れない
五十年は昼寝をしていると変わらない
無駄に戦うより李が死んでしまうのを待とう」
轟天雷は静かに眠りについた。
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